AWBを考える(オートホワイトバランスの理解と使いこなし)

今回の記事はAWB(オートホワイトバランス)についてです。オートホワイトバランスとは自動で光源の色の影響による色かぶりを補正してくれるものです。

フィルム写真ではオートホワイトバランスなどと言う概念が無く、レンズの前に付けるカラーフィルターを使用していたのでオートホワイトバランスと言う機能自体はデジタルカメラになってからのものだと思いますので、技術はまだ発展途上なのかも知れません。ホワイトバランスについてはSILKYPIXユーザーズガイドの34~39ページで考え方や調整の方法を詳しく説明していますのでそちらもあわせてご覧ください。

AWBの前にまずはホワイトバランスについておさらいしてみましょう。

ホワイトバランスとは

この写真を見ると一見普通に見えますが、本当は黒いカメラのボディが緑っぽくなっています。これは光源の色に影響を受け、写真全体が緑に色づいてしまっているためです。電球の下で写真を撮るとオレンジっぽく写るのと同じです。私達が撮影する際には「自然光」や「太陽光」と一言で言っても、例えば「カーテン越しの光」や「壁に反射した光」、「朝の光」、「夕方の光」のように状況によってその色は様々ですので、その影響による色づきを補正するのが本来の役割となります。

ホワイトバランスを光源の色に合わせることで色かぶりが緩和されます。一般的に白や黒、グレーなど本来無彩色のものに色づきが無い状態がニュートラルなホワイトバランスです。この色かぶりの緩和をシーンに応じて自動で行ってくれるのがAWB(オートホワイトバランス)です。ただし、風景写真やイメージカットなどでは必ずしもこの状態が良いわけでは無くそれもSILKYPIXユーザーズガイドではご紹介していますので詳しくはそちらをご覧ください。

AWBを理解し状況に応じて使うこと

少し写真に興味がある方ですと、AE(自動露出)があるのにも関わらず、露出補正しなければならない場合があるのをご存知でしょう。例えば

  • 背景が白い場合はプラス補正
  • 背景が黒い場合はマイナス補正

などカメラの露出制御には癖があるために、適正露出を得たい時でさえも状況に応じて露出補正をしなければならないのは釈迦に説法ですね。

AWBのホワイトバランス判定プログラムにも癖があったり状況に応じてはそのまま使えないケースがあります。以下で紹介する2つのシーンではAWBではイメージ通りになりにくいケースです。

 

被写体と背景で光が違う場合

以下の例は日陰に咲いている花を撮影したものですが、背景のボケは日の当たった葉っぱです。この場合は

  • 日陰の色(花の部分)
  • 太陽光の色(背景の部分)

のようにホワイトバランスが1つの画面の中で2つ存在している「ミックス光」と呼ばれている状態です。

 

カメラのAWBは面積の大きな背景の太陽光にホワイトバランスを合わせたようです。そのため、被写体である日陰の花は青味の強い色になっています。(日陰の色は青いため)もしこの状態が皆様のイメージに近ければよいでしょう。

 

 


SILKYPIXのホワイトバランスのマニュアル調整で今度は日陰の花にホワイトバランスを合わせた例です。そのため花の部分はニュートラルな色になりました。色温度をオレンジの方向へ調整し、花の青味を緩和した分背景が黄色っぽく再現されています。

 

 

この2つはどちらが正解と言う訳ではなく、どちらにWBを合わせたかの違いで要するに好みの問題です。

  • カメラのオートは皆様の好みを忖度してくれません。

このように写真の中に2つ以上の光源色がある場合には正解が無いためホワイトバランスを決めるのは皆様です。カメラのマニュアルホワイトバランスで合わせる事もできますが、もし撮影の現場で悩んだりテンポ良く撮影を行いたければカメラ側はAWBで撮影し、後からRAW現像時に画面を見ながらホワイトバランスを合わせるのも良いでしょう。

 

画面の中に無彩色が無い場合

画面の中に白やグレーなどの無彩色が無い場合や、全体的に淡い色をした被写体の場合にはカメラのAWBを使うと色がおかしくなることが良くあります。AWBで撮影していると、写真の中に「たまに色がおかしいカット」が出てくる場合があるのですがその場合にはオートホワイトバランスを外してしまっている場合があります。

カメラのAWBで撮影したものです。AWBの多くのアルゴリズムは「色」を検出して補正を行います。この例だと写真全体が茶色~オレンジ色をしているために、「電球による色かぶり」なのか「茶色っぽい被写体」なのかの区別ができなくなり、「電球による色かぶり」と判断した場合には写真全体をグレーに近づけようとします。そのため、発色の悪い濁った色味になってしまいます。(それがたまたま絵柄の雰囲気とマッチしてしまうこともありますが。)無彩色な被写体が画面の中に少なかった場合、AWBは「光源の色」と「被写体の色」を区別できなくなってしまいます。自分の経験上、これはどのメーカーのカメラがという訳でなく一般的にこのような傾向です。


こちらもAWBを使用していますがRAWデータからSILKYPIXのAWBを使用したものになります。SILKYPIXのAWBはRAWデータを分析し、「光の色」と「被写体の色」を分離する独自のアルゴリズムを採用しているため、カメラが外してしまったホワイトバランスも当ててくれる場合が良くありますので試してみてください。この写真の場合、ホワイトバランスが当たっていると自然で深みのあるリッチな色が再現できます。ホワイトバランスが違うだけで色の見え方は全然変わってきます。

 

まとめ

デジタルカメラは液晶画面が付いているので、画面を見ながら撮影時にある程度WBを追い込むこともできます。しかし、ミックス光などのシーンではその場でWBを決定するのが難しい時もあるのではないでしょうか?その際は割り切って、RAW現像時に補正することを前提に、AWBで撮影を続行するのも良いのではないかと思います。特に動き物など一瞬を狙う撮影なのではフレーミングやフォーカッシングにその分時間を割くと気持ちも楽になり良い写真も撮れる確立もあがるのではないでしょうか?

 

RAW現像ソフト SILKYPIX Developer Studio Pro8 / 8 USER’S GUIDE ユーザーズガイド